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接骨院勤務日報【#13~#16】
2020.09.30

接骨院勤務日報【#13~#16】

受付として働いている長野さんは、仕事もできて施術師並みの知識もある。患者さんやスタッフからの信頼も厚い頼りになる人だったが、なぜそんなに頑張るのか、〈僕〉はずっと不思議に思っていた。

第13話:「受付」の必要性

ある日、長野さんの家に招いてもらった時に、こんな話をしたことがある。
その時は、旦那さんが仕事でおらず、田島さんと2人で誘われ3人で晩御飯をごちそうになった。


料理担当は長野さんで、毎回たくさんの料理を作ってくれた。
僕たちはお酒を準備する担当で、「またこんなに買って!」と叱られるまでが毎回恒例だった。




お酒を飲みながら3人で話していると、田島さんが不意に「そういえば、何で長野さんは受付のリーダーにならないの?」と聞いた。

長野さんは、会社から「受付リーダーにならないか」というオファーを何度もかけられている。しかし、長野さんは全くそのオファーに応じなかった。
確かに、どうしてだろう。



「うーん…。今のところリーダーにあんまり興味はないね。そもそもさ、
接骨院に受付っていらないんじゃない?って思ってるんだよね。」



だって、施術者が受付業務も行えるオペレーションにすれば、その方が人件費が抑えられるでしょう?




最初、何を言っているのか分からなかった。



長野さんは接骨院の受付業務のことをこんな風に考えているのかと、衝撃だった。
反応に困り、横目で田島さんの様子を伺った。




田島さんは、長野さんの言葉の真意を探る様に、目線は長野さんに向けたままだった。
「驚き」でもなければ「納得」とも違うような。


言い表すとしたら「この人面白いこと言い出したな」みたいな表情だった。




目線を長野さんに戻したところで、長野さんが続きを話し始めた。


「施術者は施術をすることで患者さんからお金を払ってもらえるよね。でも、受付の仕事でお金を生むことは簡単じゃない。人件費だけで考えればマイナス部分が多いと思うの。

極論、資格者が受付のオペレーションができるなら、受付はいらないんじゃない?だってマイナスが0になるわけだからね。」




今度は、長野さんが言っている意味が分かった。

しかし、受付がいらないなんてことは、絶対にないとも思った。


僕たちは、いや僕自身は、かなり長野さんに助けてもらっている。
長野さんがいないと困ることはたくさんある。



僕はそれを長野さんに伝えた。



爆笑された(なんで??)。



長野さんは笑いながら、そうやって詰めが甘い子がいるから私が働けるんだよ、と。

アンタは誰かに助けてもらわなくても、今のクオリティを維持できるようにして自分の給料を上げることを考えなさい、と言われた。


何だか正論のようにも聞こえたが、複雑な思いだった。納得するには程遠い。



それに僕には、長野さんの笑った顔がどこか寂しそうに感じた。

第14話:受付が「院の売上」を作れるように

長野さんが言っていることは正しい?それとも、間違った意見なのか?




長野さんの意見に上手く返すこともできず、もやもやした心境の僕

どんな心情を抱いているか全く読めない田島さん。



そんな僕たちに対し、長野さんは苦笑しながら、「私がそう感じているだけで、仕事を辞めたいとかそんなのじゃないのよ」と言ったうえで、今後の目標を話してくれた。






長野さんの目標。それは、

「受付スタッフたちが会社の売上向上に直接関われるようにすること」




「今、私たちが給料をもらっているのは、あなた達施術者が患者さんを施術をしてくれているから。
あなたたちは会社の売上に貢献している。だからこそ、給与交渉とかもできるでしょう?

私たち受付も同じで、堂々と給与交渉をするためには、会社の売上に直接貢献しなくちゃならないと思うの。」




僕はそんなこと考えたこともなかった。まだまだ会社の売上に貢献することはできていないのに、いつ給料が上がるんだろうと思っていた。

今までの自分が恥ずかしく思えてきた。


長野さんはこの会社に入ってもう長いのに、まだ主張するには足りないと思っているのだ。今では物販も導入されているので、チャンスと言わんばかりにコンスタントに売上を上げているというから脱帽だ。


長野さんのような感覚を持って働いているスタッフは、会社で何人いるのだろう。



もちろん、正当な主張はガンガンしていくらしく、実際院長と長野さんがバトルをすることもあった。
(ちなみに長野さんはキレると怖い。2回くらいキレさせてしまった僕が言うから間違いない。)


でも、それはお互いに認め合っているからこそ、最終的にはお互い納得した形で終わっているように思う。



昇給にも減給にも理由が必要で、双方納得をしなければ後にバランスを崩すかもしれないのだと、初めて理解した時だった。給料が上がると誰でも喜ぶものと思っていたが、長野さんは一貫して、会社と自分がお互い納得できる評価を求めた。





長野さんの仕事に対する姿勢は、何年たっても変わらない。今でも数年に一度は食事に行く。いつも誕生日には連絡をくれるし、会えるときはワクワクする。なぜなら、食事に行く時には必ずテーマをもってきてくれて、一緒にディスカッションをしてくれるのだ。


社会人として、接骨院で働く施術者として考えを改めるきっかけを僕にくれた、大きな出来事だった。



この日気づいたこと・学んだことは、数年後、僕の社員教育の中にしっかり組み込まれることになる。

第15話:院長と食事に行く!


そんな話もしたなぁ、


と長野さんに蹴り飛ばされた部分をさすりつつ、僕は普段通りの業務を行っていた。




院長は、夜の営業時間が終了したと同時に帰ってきた。いつも笑顔の院長には珍しく、疲れきっているような表情をしていた。

それもそのはず、今日は一日中ずっと会議だったらしい。それでも、こうして現場に顔を出してくれるのはすごいと思う。




実は、まだ院長と食事に行ったことがない。

タイミングがあれば誘ってみようと思っていたが、さすがに今日は本当に疲れ切っているみたいで、誘うのはやめておこうと思った矢先、田島さんから


「早く誘いに行け!思いたったらすぐ行動!」


と猛烈プッシュにあった。

僕が院長を食事に誘おうと考えていることを、なぜ知っている田島さん。


でも、こんなに疲れた顔をしているのに大丈夫なのか?ちょっと心配だ。

そう言うと「それは院長が決めることだ!」と言われ、思いっきり背中を叩かれた。




「忙しいから無理、疲れているから無理というのはあんたが決めるんじゃないよ!院長の体力とか仕事力を下に見てるの!?」



…そんなことを言われてしまえば行くしかない。

勇気を出して院長に話しかけたら、すかさず院長から「飯に付き合ってくれ」とお願いされた。



心を読まれた…?



しかも、こっちがお願いされる始末。

でも、「僕もお願いしようとしてました、お疲れのところすみませんがよろしくお願いします。」
と、しっかり伝えることは忘れない。



院長はいつも通りの笑顔で、「今日現場に帰ってきたのは、このためだから。疲れた顔してごめんね」


こ の た め に 帰 っ て き た 。


トドメの一撃をもらった気分だ。





(ひとまず、院長と初めて2人だけで食事に行くことが決まった。)

第16話:院長の目標の立て方

院の後片付けが終わった後、院長と初めて2人だけでご飯に行った。



院長は、めちゃくちゃお酒が強かった。(そうだろうなとは思っていた…。)


「明日休んでもいいから、全力で飲め」

と言われて約1時間後・・・





僕は見事にトイレの住人になっていた。

無理無理無理無理。戦闘不能戦闘不能。
なんであの量の酒を平気な顔して飲めるんだ?


記憶は残っているが、まともに喋れたのは初めの30分程度。一応、院長に一番聞きたいことは聞けた。


内容としては

「院長は、今後どんな目標をもって仕事をしていこうと思っているんですか? 」

みたいなざっくりした質問だ。





すると「1年より後の将来のことなんて考えてないよ」とのこと。



院長は、いつも元旦に一年間の計画を立てているらしい。
こうなりたいという姿や将来像は日々進化していく。でも、なりたくない将来は、ほとんど変わらずに決まっている。

だから、「こんな人間には絶対にならないぞ」というマイナスの将来像があるから大丈夫なのだと説明された。



僕の中では、この考えがストンとはまって、今でもその法則に基づいて1年の目標を決めている。なりたくない将来像を自分の中に決めて、それだけにはならない!というルールを定めて過ごしている。


これだけでも本当に貴重な教えだった。


ただ、一つ疑問に答えるごとにお酒を飲まされたが。


僕にだけ飲ませるのではく、院長もそれに付き合ってくれたが、

僕は分かっている。
あれは自分が飲みたいだけだ。






明日は休んでも良いと言われていたが、何か悔しくて意地でも出勤してやろうと決意はした。





次の日、目が覚めると昼前だった。
さよなら、僕の決意。



頭を抱えていたが、部屋に違和感を覚えて頭を上げて気づいた。


ここ、僕の家じゃない・・・!



一瞬、頭の中がパニックになったが、そばにあった僕の携帯を見ると、院長から「今日はゆっくり休め」とのこと。鍵もそばに置かれていてポストに入れておいてとメッセージが添えてあった。




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・




…ここ院長の家!?



気づいた瞬間すぐにダッシュで自宅に戻り、風呂に入って、身だしなみを整えてから接骨院へと向かった。







接骨院についたのは昼休憩中の時間帯だった。中に入ろうと思ったが、少し躊躇してしまう。


院長やみんなに何て言ったら良いんだ?

必死に考えたが思いつかない。



そうして接骨院に入ることもできず、裏口でウロウロしていたら、




突然、後ろからキックされた。




(注)このコラムは、実話に基づいた作品です。個人情報保護のため、登場する人物・団体名、設定等は一部変更しています。

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