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疲労大国ニッポンを救う!?
2017.03.24

疲労大国ニッポンを救う!?

日々の生活の中で疲れた、と感じる瞬間は多々あるでしょう。特にストレス社会と呼ばれる現代において、老若男女を問わず、すべての人が疲労と無関係ではない、と言えるのではないでしょうか。疲労による身体の不調を訴えて、来院する患者さまも少なくありません。今回は、この「疲労」を取り上げてみたいと思います。 ・・・

客観的データの活用と施術

日々の生活の中で疲れた、と感じる瞬間は多々あるでしょう。特にストレス社会と呼ばれる現代において、老若男女を問わず、すべての人が疲労と無関係ではない、と言えるのではないでしょうか。疲労による身体の不調を訴えて、来院する患者さまも少なくありません。今回は、この「疲労」を取り上げてみたいと思います。

この日本社会において、実際はどのくらいの人が疲れているのでしょうか?2015年に行われたある意識調査(「疲労とアンチエイジングに関する意識調査」全国の40?60代の男女600名対象/SBIアラプロモ株式会社公表)によると、なんと51.2%が常に、またはしばしば、疲労を感じると回答をしています。

さらに、たまに疲労を感じる人を加えると、なんと87.3%、9割近くの人が、日々の生活の中で疲労を感じていることがわかってきました。こうした疲労による影響についても合わせて聞いたところ、特に影響がないと回答した人は15.9%で、残りの84.1%は何らかの影響を感じているという結果も出ており、疲労が与える影響の大きさが、この調査から明らかになりました

疲労は、多くの動物が感じている生理現象であり、疼痛、発熱と並んで生体への三大アラームと言われており、重要な防御シグナルです。しかしその科学的説明は長らくできない状態でした。そんな中、1991年に発足した旧厚生省の「慢性疲労症候群研究班」によって、疲労の化学的解明が進みました。

さらに1999年に始まった科学技術庁(現・文部科学省)の「疲労および疲労感の分子・神経メカニズムとその防御に関する研究」では、疲労が起きるメカニズムも解明され、疲労とは「過度の肉体的および精神的活動、または疾病によって生じた独特の不快感と休養の願望を伴う身体の活動能力の衰退状態」と定義されました。

この定義からもわかるように、疲労には大きく精神的疲労、身体的疲労があり、さらに脳疲労を加えて、3つに分類することができます。あるいは継続時間による分類は、急性疲労、亜急性疲労、慢性疲労があると言えます。通常の疲労であれば、休養をとる等の方法で解消されるものですが、継続時間の長い慢性疲労の場合は、疲労が蓄積された状態であり、容易に解消されません。その症状は、強い疲労感、筋肉痛、頭痛、咽頭痛、睡眠障害、精神障害、脳機能障害があると言われます。

ただし、ここで注意しておきたいのが、疲労と疲労感についてです。この2つの単語はほぼ同義語として使われがちですが、実は疲労と疲労感とはまったく異なるものです。たとえば同じ距離を、観光として風景を楽しみながら歩く場合と、ただ仕事場に向かって歩く場合、距離が同じであるにもかかわらず、疲労感がまったく異なるでしょう。
また、つまらない単純作業はすぐに飽きて疲れてしまいますが、やりがいのある仕事や楽しい作業(たとえばテレビゲーム)は疲労感が少なく感じられます。

このように疲労感は、意欲や達成感に大きく影響されていることがわかります。これは、前頭葉が発達した人間だからこそ受ける影響である、と言えます。この疲労感をあまり感じない時、実は身体は疲労していますが、ドーパミンやβ-エンドルフィンというような興奮物質が生み出す達成感が、これを感じる程度を抑えているのです。

ここまでわかってくると、疲労には脳が大きく関与していると考えられます。筋肉が疲れたと感じる時にも、実は脳疲労が起きているということが近年、わかってきました。
特に、自律神経の中枢と言われる視床下部が、身体を使った時に疲労していたのです。余談ではありますが、これまで筋肉痛は筋肉に乳酸が溜まることが原因であると、長らく言われてきましたね。この説は科学的根拠がないことが明らかとなっています。

ではなぜ、身体を使う時に脳疲労が起きるのでしょうか。運動をしている時のことを想像してみてください。運動を始めると自律神経の働きにより、数秒後には心拍が上がり、呼吸が早くなり、やがて汗をかきます。こうした症状はごく自然なのですが、すべて脳の中にある中枢(視床下部や前帯状回)がコントロールをしているのです。よって、身体を使う時であっても、視床下部は常に疲れやすい部分であると言えます。

こうした疲労によって発される疲労感という信号が、ドーパミンなどにより覆い隠されてしまうと、疲労が蓄積され、慢性的疲労に陥ってしまいます。もしも、覆い隠されている疲労を数値として知ることができるようになれば、どうでしょうか。

最近の研究結果から、疲労の原因として活性酸素が注目されています。人間が活動すると、筋肉であっても脳であっても、酸素を用いてアデノシン三リン酸を作り出します。
この結果として大量に産生されるのが、活性酸素です。この活性酸素は、強力な酸化作用をもっているため、過度に発生すると、生体防御の枠を超えて自身の細胞を酸化する恐れがあります。
細胞が酸化することで機能不全に陥り、活動能力の衰退、疲労へとつながるのです。こうした活性酸素による細胞の酸化は、老廃物を産生しますが、その一種から誘発される物質として疲労因子FF(ファティーグ・ファクター)があります。


疲労因子FFの存在が明らかになったのは、2008年のことです。東京慈恵医科大学ウイルス学講座の近藤一博教授の報告によると、実験で、徹夜で激しい運動をさせたマウスの臓器を調べたところ、あるタンパク質が通常の3?5倍、肝臓や心臓にいたっては10倍もの量が検出されました。
このタンパク質こそ疲労因子FFでした。さらにはこの疲労因子FFを元気なマウスに投与したところ、くるくると車輪を回していたマウスが、徐々に運動をしなくなり、疲れて動けなくなったということです。

この実験から示唆されたのは、疲労因子FFは疲れを起こしてしまう直接の原因であること、そして疲れている状態とは、身体に疲労因子FFがたくさん増えた状態であること、というものでした。

この疲労因子FFの発見は非常に画期的なものでした。なぜならこれまではあいまいな点が多かった疲労そのものを客観的に測定できるようになるからです。ドーパミンなどにより覆い隠されている場合であっても、測定が可能になってくるのではないでしょうか。

私たち接骨院(整骨院)・鍼灸院の従事者とも、こうした客観的データを取り扱うことで、施術を受ける側が自身の身体の状態を施術前、施術後で理解しやすくなると、私は考えます。継承されていく技が、こういった多様な研究を受け、より有効的なものへと発展していくことを願います。

参考
文部科学省科学技術振興調整費 生活者ニーズ対応研究『疲労および疲労感の分子・神経メカニズムとその防御に関する研究』斑 「みえてきた疲れのメカニズム」
厚生労働科学研究費補助金(障害者対策総合研究事業)(神経・筋疾患分野)(総括)研究報告書「慢性疲労症候群の実態調査と客観的診断法の検証と普及」
構成科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康科学総合研究事業「疲労の実態調査と健康づくりのための疲労回復手法による研究」

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