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カルシウム・パラドックス
2013.09.20

カルシウム・パラドックス

ヒトの骨は一度作られたら、ずっと同じ骨成分というわけではありません。常に古くなった骨を壊して吸収し(骨吸収)、その場に新しく骨を作る(骨形成)という作業を繰り返しながら、血液中のカルシウムの値を調節すると共に、骨の強度を保っています。これを骨代謝と呼び、骨吸収は破骨細胞が、骨形成は骨芽細胞がそれぞれ…

カルシウム・パラドックス

ヒトの骨は一度作られたら、ずっと同じ骨成分というわけではありません。常に古くなった骨を壊して吸収し(骨吸収)、その場に新しく骨を作る(骨形成)という作業を繰り返しながら、血液中のカルシウムの値を調節すると共に、骨の強度を保っています。これを骨代謝と呼び、骨吸収は破骨細胞が、骨形成は骨芽細胞がそれぞれ担っています。健常人の骨代謝では骨吸収と骨形成のバランスが取られているため、身長の伸びと共に骨量は増加し、その骨量は20歳前後から初老期まで維持されます。

カルシウムは人体内に含まれるミネラルであり、とても重要な成分です。99%のカルシウムは骨や歯を形成するのですが、血液中に存在する1%のカルシウムは、心臓や脳、筋を動かすという大変重要な役割を担っています。人間の体を構成する60兆個の細胞はカルシウムの出す情報によって各々の役割を果たしており、カルシウムが無いと活動を維持することができません。この血液中のカルシウム量が不足すると、体は心臓の動きを守ることを第一に考え、自身の骨に貯蔵されているカルシウムを溶かして補おうとする働きが起こります。「カルシウム不足により、骨が弱くなる」と言われているのは、「血液中のカルシウムを補うために骨からカルシウムが溶け出しているから」ということなのですね。ですから、むやみにカルシウムを口から取り入れるのではなく、この血液中のカルシウム量を保つことが必要なのです。

また、血液中のカルシウム量のバランスが崩れると、関節の炎症を起こすだけではなく、他の臓器の細胞に対して有害になることが多くあります。例えば、すい臓においてカルシウムはインスリン分泌を促す役割を担うのですが、このカルシウムの働きが低下もしくは阻害されると、もちろんインスリンの分泌が低下してしまい、糖尿病となりますし、血管壁に付着して石灰化すると動脈硬化や高血圧を引き起こし、そして脳においては伝達経路を壊してしまい認知症になるなどと、様々な器官に影響を及ぼし、多くの生活習慣病の原因になりかねません。それでも血液中のカルシウム量が低くなれば、心臓を守るために体は血液中にカルシウムを溶かし続けます。その結果、血液中や軟部のカルシウム量が増え、動脈硬化などの様々な疾病が起こり、また骨自体はもろくなる―これがいわゆるカルシウム・パラドックスと言われる現象です。

特に思い当たる節がない、急激な痛みを伴う関節痛の原因として、この血液中のカルシウムが身体の各関節に沈着し炎症を起こす石灰沈着性腱炎:ハイドロキシアパタイトによる痛みも多くあるようです。いわゆる四十肩、五十肩と呼ばれている症状の代表的な発生部位はもちろん肩関節ですが、実は同様の症状が股関節、次いで、膝や肘、足や手指にも発生します。手関節や手指に起こった場合、多くは使い過ぎによる痛みとして扱ってしまいがちですが、特にケガをした覚えがないのに急に痛み出したり、腫れたりした場合には石灰沈着性腱炎を疑ってみた方が良いでしょう。

この石灰沈着性腱炎の痛みを引き起こす燐酸カルシウムの石灰化は、現在のところ、明確な原因が証明されていません。ただ、元来カルシウム不足である日本人に多く、その中でも女性に、特に閉経後に多く発生することから、骨代謝のバランスや女性ホルモンが関係しているのではないかと考えられています。整形外科では治療薬としてカルシウムを処方しているとこともあるようです。とにかく、この血液中に存在する1%のカルシウムが関節に沈着して、何かしらの刺激によって骨液胞内に流入した場合に、体が異物と判断して攻撃するため炎症となり激痛が起こります。石灰沈着性腱炎においては、ホルモン、カルシウムの代謝や骨粗しょう症にもアプローチしていく必要もあるのではないでしょうか。こういった症状には、いろいろな手技を加えてみても、なかなかすぐに良くなることはなく、まずは安静が一番です。また、熱感、腫れを伴うので十分にアイシングをすることが大切ですね。


世界の中でも、日本人のカルシウム不足は顕著です。その要因には、以前のような魚主体の食生活でなくなって来たということと、地理的環境も挙げる事ができます。火山国の日本の土壌には、ヨーロッパやアメリカに比べるとカルシウムが少なく、河川の水にもカルシウムは少ししか含まれていません。この日本の土壌で育った作物を食べ、カルシウム分の少ない水を飲んでいる日本人は、もともとカルシウムを摂取しにくい環境で生活しているわけです。そのような環境において、不規則な食事や無理なダイエットなどでカルシウムの摂取量が極端に足りない人、そして日光に当たることを頑なに避け続け、カルシウムの生成に必要なビタミンDが不足している人は、血中カルシウム濃度がどんどん低くなり、その分だけ骨からカルシウムが溶け出して、カルシウム・パラドックスや骨粗しょう症を引き起こしています。十分にカルシウムを摂取させ、必要最低限の日光を浴びさせるよう促すなど、カルシウム・パラドックスや骨粗しょう症を予防する身体作りを、我々柔道整復師がうまく誘導していきましょう。

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