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施術効果を最大限に高めるには
2017.06.21

施術効果を最大限に高めるには

 接骨院(整骨院)・鍼灸院を訪れる患者さまが訴える症状として、最も多い症状は何でしょうか。  厚生労働省が公開している国民生活基礎調査の概要によると、有訴者率(人口1,000人あたりの、病気やけがで自覚症状のある人の比率)が最も高い症状は腰痛であることが明らかになっています。さらに業務上疾病発生状・・・

接骨院(整骨院)・鍼灸院を訪れる患者さまが訴える症状として、最も多い症状は何でしょうか。
厚生労働省が公開している国民生活基礎調査の概要によると、有訴者率(人口1,000人あたりの、病気やけがで自覚症状のある人の比率)が最も高い症状は腰痛であることが明らかになっています。さらに業務上疾病発生状況等調査では、業務上の負傷に起因する疾病の85%近くが、災害性腰痛(休業4日以上の業務上疾病の中で、腰痛の発生に繋がった業務上のエピソードがはっきりしているもの)によるものでした。

人は、なぜここまで腰痛に悩まされるのでしょうか。

腰痛は原因を特定できるか否かで2種類に分類することができます。まず、医師の診察および画像の検査(X線やMRI)で腰痛の原因が特定できるものを、特異的腰痛と呼びます(例:椎間板ヘルニア)。一方で、正確な原因が特定できないものを非特異的腰痛と呼びます(例:ぎっくり腰)。腰痛の約85%は後者の非特異的腰痛に分類されると言われ、一般的に腰痛症と言えば非特異的腰痛のことを指します。
こうした腰痛の施術法としては、低周波、EMSといった電気治療法、手技による骨盤矯正等、さまざまな方法が考えられます。皆さんも検査と問診(カウンセリング)のデータから適切な施術を提供しているでしょう。ところでそんな中、なかなか症状の緩和が見られない患者さまもいらっしゃるのではないでしょうか。そういった方は腰の筋肉や骨、椎間板等の異常ではない場所に原因がある可能性が考えられます。
近年の研究によって、腰痛の原因は多様で複雑なものであることがわかってきました。その一つとしてストレスの関与が注目されています。通常は痛みの原因箇所に着目して施術を行いますが、今回は少し視点を変えて、ストレスという心因性の原因との関係から考えてみようと思います。
身体の組織が損傷した時、痛みの信号は神経を介して脳に伝わります。すると脳からは、ドーパミンという神経伝達物質が多量に放出されます。この時、人間の脳に備わっている痛みの信号を抑制するシステムが働きます。その働きをするのが、セロトニンやノルアドレナリンです。これらが放出されることで痛みの伝達が抑制され、その結果痛みが緩和されます。ところが長期間ストレスや不安のある状態が続くと、セロトニンやノルアドレナリンが放出されにくくなります。体感としては痛みを実際以上に強く感じたり、感じる期間が長引いたりするようになります。この状態では、施術をしても期待した効果は出ないでしょう。
同様にドーパミンが関与する神経系として、脳の報酬系があります。脳の報酬系とは、脳において欲求が満たされた時、あるいは満たされることがわかった時に活性化し、その個体に快の感覚を与える神経系です。プラセボ効果という言葉を聞いたことがあるでしょうか。プラセボ効果とは、偽薬を処方しても薬だと信じることで、何らかの改善がみられる効果を意味します。例えば、患者さまに除痛を目的として、モルヒネを注射するとします。この時に治療の情報を与えるか与えないかでは、後者の方がその効果が減少することが報告されています。必ず良くなるだろう治療だとしても、十分にその意味を伝えていなければ、効果が薄れてしまう可能性があるということです。こうしたことからも、患者さまへ身体の状態や、施術についてお伝えしておくことは大切であると言えます。
ちなみに、施術前後で痛みを感じる箇所が変わるということはよくあります。その原理をよく理解するために、マッケンジー法Rをご紹介します。国際マッケンジー協会日本支部Rによると、マッケンジー法とは次のようにあります。


(マッケンジー法Rとは「引用」)マッケンジー法は、腰痛や首の痛み、手足の痛み等に対する検査法、施術法として国際的に高い評価を得ています。ニュージーランドの理学療法士、ロビン・マッケンジーによって、1950年代に考案されて以来、世界中で広く活用されている健康回復のための自己管理方法です。


マッケンジー法では、問診と理学検査に重点を置いており、この方法そのものが「評価の体系」と言われることもあります。特に、脊柱原性の痛みを評価、マネージメントする上で非常に重要な現象があります。それは中央化(Centralization)現象です。中央化現象は、脊柱原性の痛みにおいてより遠位に感じられる痛みが、ある動作を行ったり、ある姿勢をとったりすることにより近位の身体部位に移動してくる、あるいは収束してくる現象と定義されています。マッケンジー法では、中央化現象と予後あるいは治療成績との関連については、これまでいくつもの研究が発表されていますが、いずれの研究においても中央化現象と良好な予後や治療成績との高い相関が示されています。また、中央化現象と相反するのが末梢化(Peripheralization)現象です。末梢化現象とは、脊柱原性の痛みにおいて、ある動作を行う、あるいはある姿勢をとると、より遠位の身体部位へ移動していく、あるいは広がっていく現象と定義されています。いかなる動作や姿勢でも、末梢化現象しか観察されない場合は、中央化現象が認められる場合に比べて予後が悪い、あるいは治療成績が不良であることが、これまでの研究によって示されています。
マッケンジー法の効果判断を利用すると、痛みが残っているから効果がないと思われる状況でも、良い反応が出ていると考えられる場合があります。例えば、施術前に腰から太ももの裏まで痛みがあったものが、施術後に腰だけに痛みが残ったという場合です。これは、腰へと中央化したと考えられるため、良い反応と言えます。
しかし、患者さまとしては腰に痛みが残っていることから、施術に効果がなかったのでは?施術に問題があったのでは?と感じる可能性があります。施術の効果をお伝えすることに加え、こうした反応についても事前に伝えておくと良いでしょう。
施術の効果を最大限に引き出し、痛みを緩和させるためには患者さまへ痛みの状態や施術方法、その効果といったことを十分にお伝えすることが、近道になるかもしれません。


【参考】

厚生労働省、国民生活基礎調査(平成25年)

厚生労働省、業務上疾病発生状況等調査(平成27年)

【引用】
国際マッケンジー協会日本支部R、マッケンジー法Rとは、http://www.mckenzieinstitute.org/japan/ja_JP/patients/what-is-the-mckenzie-method/、2017/04/18引用

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