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保険者(療養費担当)の意識調査に見る 柔道整復師・鍼灸師の義務と権利
2017.01.23

保険者(療養費担当)の意識調査に見る 柔道整復師・鍼灸師の義務と権利

接骨院・鍼灸院で働く柔道整復師・鍼灸師のみなさんは、ご自身が地域医療の一端を担っていると思いますか? 多くの先生が自信を持って「そうだ」とおっしゃるのでは...

鍼灸院・接骨院の価値

接骨院・鍼灸院で働く柔道整復師・鍼灸師のみなさんは、ご自身が地域医療の一端を担っていると思いますか?

多くの先生が自信を持って「そうだ」とおっしゃるのではないでしょうか。接骨院・鍼灸院とは、患者さまの身近にあって、病院に行くまでもないちょっとしたケガや不調を処置するには最適の場所だと私たちも思います。そして、そんな先生方の元へ通院している患者さま方も、きっとその実感をお持ちだからこそ通っておられるのではないでしょうか。

次の図は、平成25年3月、地域包括ケア研究会報告書より抜粋された「地域包括ケアシステムの姿」です。厚生労働省のHPにも掲載されています。

お気づきの先生も多いと思いますが、どこにも鍼灸院・接骨院、柔道整復師や鍼灸師の名前がありません。自信を持って地域医療を担っていると思うのにおかしいですよね。むしろ一番身近に描かれていても良いと思うくらいなのですが・・・。この図を見て、「また入れてくれていない。」と思った方も多いでしょう。しかしそこには、「忘れられている」というより、「しっかり業界内が確立されていないから入れてくれないのだな」、と感じる部分も多くあるのではないでしょうか。ということは、国としても公式資料で医療の枠組みとして鍼灸院・接骨院を明示できる状態ではない、という考えを暗に示していると言えます。しかしながら検討委員会において、確かに柔道整復師は今後、地域医療を支える重要な役割があると発言があったように、期待もされているはずなのです。

過去の推移から見る国の指針

期待されていながらも公式に発表されないという背景の中、それでは接骨院・鍼灸院はいったい何を求められているのでしょうか。それは少しずつ、しかし確実に道が示されてきています。一番感じ取りやすい柔道整復の療養費の推移を少しだけ辿ってみましょう。

平成18年度まで請求が可能だった4部位目は、平成22年以降は0%となり、平成25年には3部位目が60%に低減となります。接骨院で見ることのできる状態であり且つ3部位以上に処置が必要な場合は限りなく少ないはずであるということが示されています。平成26年の改定では、消費税対応を含めて初検料と再検料の上乗せ改定となりました。そして平成28年10月に行われた療養費支給基準の改定は、骨折・不全骨折・脱臼に係る整復料・後療料等がかなり引き上げされています。接骨院とは、こうした応急施術を行うべきであり、適切に運用されていれば相応額の保険料を確保するという見解を示した改定でした。不正を防止するためということももちろんあるでしょうが、行政の思う「適正」な数値に向けて着実に進んでいるのでしょう。

実際にそうした応急施術・外傷対応を中心運営としている接骨院を私たちは知っています。前号で取り上げた武田先生です。実は、武田先生の院のスタッフとこれからの接骨院・鍼灸院の在り方についてお話をした際に、不正請求の話題となりました。部位転がしというワードが行政から出るようになった、という話でしたが、スタッフの方から「部位転がしとはなんですか?」と聞き返されてしまいました。不正取締りの強化や横行についてはご存知でしたが、そういったワード自体は知らなかったようでした。何故なら彼らにとっては全く不要なワードで、気にする必要がないからということでしょう。

というのも、武田先生の院は、骨折や脱臼、捻挫という症状に対しての整復固定を中心に回っていますから、それ以外はすべて自費なのです。そして、そうした運営方法の院は「患者さまからの大きな信頼」を生みます。保険と自費のはっきりとした境界線があること、西洋医学の視点で病院や整形外科の医師と連携がしっかり取れること、そして明確な“治療指針”を掲げていることで、「先生」としての位置感を若いスタッフでさえも持っています。そのため先生主導で来院日が決まり、患者さまもそれをすんなりと受け入れている状態です。ケガをしたら武田先生の院へと患者さまが思ってくれていて、次につながる自費の提案も受け入れてくれやすい環境がグループ全体で自然とできています。

この形は、本来の接骨院・鍼灸院の姿であって、学校で学んだ内容そのままだと思います。これまで骨折や脱臼では接骨院には来てくれないし、それ以外でなんとか売上を立てるしかない、と思い込んではいなかったでしょうか。それに対して武田先生は「それは断るから来ないだけだ」と言い切っておられました。

もしご自身の院が、骨折・脱臼・捻挫といった整復固定を行っていたとしたら、今回の改定はかなりのプラスになったと思われます。

今後、どの方向に持っていくのかは院長・経営者がお決めになることですが、どんな方向に進んだとしても、苦し紛れの保険請求をするのではなく、示されている法律をはっきりと守ったうえで、人間力だけではなく「医療の一端を担う施設」として地域に信頼をまずは届けなければなりません。そうすることでようやく公式に認めてもらえる存在となるのではないかと思います。

保険者の意識に見る国の指針

さて、保険者たちはそういった国の方針に沿って支給審査を行っています。動向を直接肌に感じている一端であるのが彼らでしょう。「業界がちゃんとまとまりきってないのを知らないから、返戻してくるんだ」なんて思っていたりしませんか?業界のいわば“怠慢”によって横行している不正や法律と添わない状況がある点は、正直なところ保険者たちにとって関係がないわけです。厚生労働省からの通知に従い、それに従うために必要だと思われることを実施します。もちろん行き過ぎた点もあるかもしれないのですが、それをやめてもらうにはやはり柔道整復師・鍼灸師たち自身がより明確に申請を行っていくしかないのです。



実は様々な方から話を聞く中で、驚くようなことも耳に入ってきます。




・全ての患者さんが月初に怪我をし、月末に治癒していることになっている。

・全ての申請書が3部位100%になっている。

・「部位が多いと返戻になるので、1部位にしているんです。」 と言われた。

・「家族や従業員の保険証は使ってもいいですか?」と言われた。

・違う事業主の施術所なのに負傷原因やシチュエーションまで、一言一句同じものが書かれている(おそらくレセコンの負傷原因例がそのまま使われている)。

・”自宅の門でつまづいて負傷"とあるので患者に確認を行ったら「うちに門はない」と回答された。



いまだにこうした接骨院が多いという事実が現にあり、保険者はこうした事実をより身近に感じているのです。だからこそ、本当であるか否かを確認するために必要なことをあれこれと手を尽くします。

そんな彼らは今、接骨院に対してどのような印象を持ち、どういったところに興味を持っているのでしょうか。今回、私たちは全国3,000団体の保険者(療養費担当)に対して意識調査を行いました。

はっきりと言いますね。「柔道整復師・鍼灸師資格者自身がルールを理解しておらず、慢性的に不正を繰り返している」と考えていると受け取れる内容でした。指導・通知の内容を守ろうと、患者さまのためになることをしようと本気で思っていればいるほど、本当に悔しい内容ですね。


まずは考え方のチェンジから
不正とわかっていてやっている先生、わからずにやってしまった先生、証明を明確にできなかった先生、いずれにも等しく法律は適用されます。わからずにやってしまった方などは隠す気がない分、逆にすぐ露見するでしょう。最近はデータ化されていますから、同じことを書いてたりすれば一瞬で統計が出てしまいます。

しっかりと施術内容を証明するためには明確に患者さまが理解していなければならず、そしてそのためには先生方自身が理解し、患者さまに説明する義務を果たさなければなりません。それを果たすことによって得られるのが権利である療養費の支給ということですね。

いつまでも見逃してはもらえません。今は見逃されているのでもありません。データを集めて準備しているところでしょう。国は動き出しています。それを察知した周囲も動き出しています。少しずつ、少しずつ、そして時がくれば一気に淘汰される時代がすぐそこへ来ています。

まずは「わかってくれない」から「適正化されている」という意識に変えるところから行ってみてはいかがでしょうか。

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