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衛生管理
2017.06.14

衛生管理

気づかぬうちに患者さまが減っている!?その理由(ワケ)は。 衛生管理 患者さまの心の声、聞こえないフリをしていませんか。 医療・福祉施設では、徹底的に行われている衛生管理。 みなさまは、健康を預かる施設として十分に衛生的だと自信を持って言えるでしょうか。中には・・・

~気づかぬうちに患者さまが減っている!?その理由(ワケ)は。~

◆"汚い"と思う意識・基準の変化
近年、潔癖症の人が増加しており、人の触ったものは触れない、食べられないという方もいらっしゃいます。過度の潔癖が放蕩に良いことなのか、という点はさておき、「除菌・殺菌されていれば安心する」と感じる人が増えてきている事実を、念頭に置いておく必要があります。

そこで今回、接骨院専用の運営システムや自費パッケージを販売するHONEY-STYLEから、接骨院に通ったことのある約28.4万人の方を対象に「接骨院の衛生面に関するアンケート」を実施いたしました。


「なんだ、あんまりいないじゃないか」と思った方、ちょっと待ってください。このアンケート対象は、予約が導入されている比較的先進的な接骨院に通う患者さまだと考えられます。そうした接骨院に通っている患者さまのうち、実に13.7%もの方が通うのをやめたか、やめようと思っているということです。例えば、月の新規来院数が100人だったとして約13人の方が施術効果や人や時間や料金ではなく、清潔感の欠如を理由に通うことをやめてしまうということになります。これに平均単価をかけたとき、どのくらいの損失に繋がるでしょうか。これは経営者であれば深刻に受け止めるべき数字です。


◆施術者と患者さまの視点は全く異なる
みなさまの五感は、もしかすると1日中そこにいる“慣れ”から鈍感になっているのかもしれません。わかりやすいのが嗅覚でしょう。大抵の接骨院は、入口のドアを開けた途端、お灸や人のニオイが入り混じった独特のニオイがします。タバコ臭のする施設だって、あるのかもしれません。ニオイと記憶は直結しやすく、強く印象に残ります。“接骨院のニオイは苦手”という記憶を患者さまに抱いて欲しくはないですよね。一方、医療施設は無臭もしくは消毒液の匂い=清潔なイメージがあります。
室内だけではなく、患者さまの顔に触れるもの(タオルやベッドの顔出し穴)で少しでもニオイがあったとしたら、絶対にいい気持ちはしません。

さて、ここで先に挙げたアンケートから、患者さまが接骨院や施術者に対して衛生面について気になる点をご紹介します。


・スリッパは消毒をしているのか?
・インフルエンザなどの感染症がタオルなどを媒介してうつりそう。
・お灸やタバコのニオイが気になる。
・荷物籠の中のゴミや髪の毛が気になる。
・ベッドに敷いているタオルケットが使い回しなのが嫌。
・他の患者さんを触ってから手洗いをその都度するのか?
・白衣が汚れてヨレヨレだった。


こうしたお声は、実に120件以上ありました。施術効果や施術者、時間や料金は気に入っているのだから、ここをなんとか改善して欲しいという患者さまの切なる想いだったのかもしれません。

視線の高さも施術者と違っているのがおわかりでしょうか。うつ伏せになった時は、床のホコリや籠の中の髪の毛などを見つめているようですよ。


◆その掃除、伝わっていますか
掃除は毎日されていますよね。掃き掃除、拭き掃除、トイレ掃除、院外の掃除、洗濯、ベッドや枕の手入れと、患者さまがいない時間に入念に掃除をされていることでしょう。実は、この“いない間に”という気遣いが、「ちゃんとやっているの?」と思われてしまう一つの要因となっているかもしれません。

もし、小さなゴミが床の端に落ちていたら、患者さまはどう感じるでしょう?「たまたまゴミが落ちてしまったんだな」なんて都合の良い解釈はしてくれませんよね。

だからといって、患者さまの目の前で掃除や洗濯をガンガンするべき、と言っているのではありません。例えば患者さまの目の前でタオルを新しいものに替えてみたらどうでしょうか。瞬時に、「前の人のやつかも…」という疑念は払しょくされ、清潔感を感じていただけます。こんなちょっとした工夫で「清潔にしてくれてるんだな」と思ってもらえるようになります。

日々の業務の中で「何をすれば清潔に感じられるか」「安心感に繋げるにはどうしたらいいだろう」と考えていただけたら、きっと何らかの変化が生まれるはずです。


◆利益損失をどう見るべきか?
「汚い!」と少しでも思わせてしまったら、その患者さまは来なくなる可能性がある、ということは十分におわかりいただけたことと思います。

汚いと思う点は色々とあります。ニオイ、着色、感触、音など、少しでも感じたら、すべてが汚いのでは…と思われてしまうかもしれないのです。
例えば、スリッパの新調には経費がかかる…なんて何年も汚れたものを使い続けていませんか?新しくすることで、先にお伝えした約13.7%の離患を防げたとしたらどうでしょう。数千円の経費は安いものではないでしょうか。

ある接骨院では、スリッパを1ヶ月に1度、全く違う色に入れ替えていました。ここまでお読みいただいた先生であれば、その理由にお気づきのことと思います。

大病院と同じような衛生管理を行うには難しい面もあり、また、そこまでの必要性もないと思います。ですがちょっとした工夫、ちょっとした出費によって、大きな損失を防ぐという視点も重要です。自費化が浸透してきた今、新たな差別化の方策として“医療の一端である”という意識の在り方が、今後の接骨院の行方を大きく変えて行くひとつの要素となるのではないでしょうか。
まずは一度、初心に戻り、患者さまの視点でドアをくぐるところから始めてみませんか。

感染対策分野において様々な講演活動を行う川村先生に教えていただきました。

塩中) 今回、「衛生管理」がテーマということなのですが、本題の前にひとつ、僕が疑問に感じている点がありまして、先生のご見解をお聞かせいただきたいと思います。

最近、抗菌・除菌といったことが必要以上に騒ぎ立てられているように僕には見えるんですね。でも、菌というものは体内に取り込むことで免疫が強くなるという点もあるのではと僕は思っているんです。あまりにも無菌状態で育ってしまうと、免疫力の低下につながるのではないかと。現にすぐに病気になったりと身体の弱い子どもが増えているように感じるのですが、いかがでしょうか。

川村) ご指摘の理由で、私自身も無菌状態が必ずしも良いとは思っていません。以前、比較的抗菌の都市部の環境で育った私の子どもと、田舎の山間で育った従兄弟の子どもが、ゴールデンウィークを一緒に過ごしました。ゴールデンウィーク明けに、息子は重度の溶連菌感染症に罹患して大変な目にあったのですが、従兄弟の息子はなんともなかったんです。この例のように、行き過ぎた抗菌や無菌状態は免疫力を低下させるでしょう。その一方で、世の中は抗菌や無菌の方が安心安全だ、という考え方になっているのは事実だと思います。

塩中) TVCMなどでも、まな板にこんなに菌が!というようなものを良く見ますよね。そういった不安を余計にあおるような広告も増えてきているような気がします。最近、電車のつり革に触れない、なんて方も増えてきているみたいで、潔癖症を助長しているのではと感じますね。

川村) 「菌がいた方が良い」というのは、現代の方には受け入れづらいとは思います。賞味期限が切れると食べられない、という方もたくさんおられるのではないでしょうか。でも、常在菌のように病原性を示さない細菌もいますし、中でも善玉菌などは私たちの健康の維持に必要な細菌です。

塩中) 医療に携わる「先生」という立場の方は、おそらくそういう感覚をお持ちであると思います。でも今は、無菌が好まれる世の中であるという事実は、我々柔道整復師も受け入れなければならないことなのでしょうね。清潔感を求めるというか。例えば、接骨院ではタオルを患者さんにかけて施術を行うのですが、前の人に使っていたものを使うのは嫌という感覚も同じでしょうか。

川村) タオルに関して言えば細菌の有無よりも、前の人の皮脂や汗、十分に洗髪されていない髪などが生理的に受け入れられないという気持ちも大きいのではないでしょうか。

私はエステに行くのですが、女性顧客ばかりだからか、意外と一日そのままのタオルといった雰囲気の店舗が少なくありません。前の人が例え女性であっても、女性だから清潔だというわけでは決してありませんので、都度、清潔なタオルを出してほしいです。

塩中) なるほど。接骨院では最近は高齢者向けというより、若い女性向けの施設が増えてきていますから、同じことが起きていそうですね。病院では毎回必ず取り替えるということも聞いたことがありますが、これはどうでしょうか。

川村) 病院の場合は、シーツもタオルも、一度でも患者さんが使用したものは、すべてクリーニングされます。手袋や注射針も使い捨てで、次の患者さんには必ず新しいものを使います。内科で喉を見るときに口の中に入れるヘラや、歯科で使用する器具類は、ガス滅菌をして一つずつ袋詰めされています。

塩中) 医療現場でそのように変わってきたのは、やはり世の中の流れからでしょうか?

川村) というのもあるのですが、最大の理由は人件費の節減だと思います。久しく医院の中で煮沸消毒や高圧滅菌をやらなくなりました。リネンのクリーニングはもちろん、臨床検査の分析もアウトソースした方が人件費よりも安いんです。小さな医院でも随分、アウトソース化されていますよ。

塩中) その発想は接骨院の業界では全くなかったですね。自分たちで洗濯したり、干したりしています。業務時間中ではなく、お昼休みにやっていたりもして。なるほど、そういった仕事をアウトソースするという視点も見習うところですね。ナイロン袋でパックされていると清潔感を感じます。

川村) 「綺麗なものをご用意しましたよ」とアピールする目的も兼ねた、患者さんの前でビニールからタオルを取り出すという方法は、リーズナブルで効果的だと思います。温泉宿では、実に大量のタオルや手ぬぐいが必要でしょう。すべて新調していては大変な経費になります。そこで、一度使ったタオルを洗濯して使い回す場合、「足湯用」として積んであります。顧客も納得して利用できる良策です。

塩中) 逆に、せっかく袋に入っているのに、例えばレストランで不快なニオイのあるおしぼりが出てくると、本当に洗ったのかなと疑念を抱いてしまうことがありますね。

川村) あれは、皮脂の酸化など他の要因もありますが、細菌が原因のことも少なくありません。洗剤が足りなくて十分に汚れが落ちていないのか、菌が繁殖しやすい温度で長時間放置されていたのかわかりませんが。いずれにせよ、そんなお店には二度と行きません(笑)

塩中) 接骨院でも、「お灸のニオイが服や髪につくので、「お葬式の帰り?」と友達に言われる」と患者さんから言われることがあります。お灸なので嫌なニオイではないのですけどね。それで芳香剤を置いてしまうと、ニオイが混じって今度は気持ち悪くなってしまって。

川村) そういったニオイ対策も、広範囲では衛生管理と言えるかもしれません。多くの女性は、ニオイに敏感です。それに、先ほど衛生面を考慮して、枕に不繊布を敷いている接骨院があると伺いました。不繊布はあまりにも薄すぎます。前の患者さんの皮脂も汗はもちろん、細菌も通過して枕にまで届いているでしょうし、その皮脂や汗が替えた不繊布を通過して、自分の顔につくと思うと、ゾッとします。



塩中) そうなってくると感染対策も気になります。接骨院で起こり得る感染というと、どのようなものがあるでしょうか。

川村) 接骨院で心配なのは水虫ですね。水虫は真菌というカビの菌です。人の細胞に構造がよく似ているため、感染するとなかなか治りません。水虫の持病がある患者さんが、靴を脱いでベッドに上がります。おそらく真菌がいっぱいの角質が落ちるでしょう。健康な肌であれば、ほぼ感染はしません。しかし、次の患者さんが乾燥でひび割れたかかとだったり、足に切り傷やすり傷のあるような方だと感染してしまいます。これまで接骨院で問題にならなかったのは、誰も感染経路が接骨院だと特定できなったからではないかとも思えます。

塩中) 確かに危険ですね。とするとスリッパもそうですよね。女性だと夏場などはスリッパが気持ち悪いという方もおられました。

川村) 感染は別としても、前の方の汗や足のニオイがするかもしれないスリッパに、抵抗がある方は少なくないと思います。ビジネスホテルのスリッパは、一度ずつクリーニングされていますよね。そういう顧客視点の衛生管理って重要です。


塩中) 女性の声は本当に参考になります。
消毒や殺菌と言えば、接骨院ではアルコール消毒液を置いているところが多いのですが、効果的な使い方というものがあるのでしょうか。噴射時間とかアルコールの種類とか。

川村) アルコールで死ぬ菌と、殺せない菌がいるということをまず知っておかないといけません。先ほどお話に出た水虫の真菌は、アルコールでは死滅しません。ただ、大体の菌は、普通の石鹸による手指洗浄で十分落とせます。また、アルコールは手が荒れやすい点が心配です。つまり、手荒れ=健康ではない皮膚は菌の温床となり、媒介してしまう可能性が高まります。医療施設の感染対策マニュアルでは、手荒れ防止のためにハンドクリームの使用まで推奨されています。

塩中) 接骨院の現場を知る者としては、一人の患者さんに触れるたびに5分ずつ手洗いするということは難しいものがあります。そういった忙しい中でも、効果的にできることがあれば教えていただけますか。

川村) べたつきがあったら、汚れていると見なします。アルコールを手に塗り込んでも汚れは落ちませんから、汚れを落とすという点でも洗浄した方が衛生的でしょう。どうしても時間がないときは、ウェットティッシュで拭ってからアルコールを最小限利用すると、より清潔が保てるでしょう。

他には、咳エチケットを取り入れてほしいですね。咳をしている方が院内にいたら、即、帰りたくなる患者さんがいらっしゃるかもしれません。咳をしている方を見かけたら、「よかったらお使いください」とディスポーザブルのマスクをそっと差し出します。咳をしている方は「親切にしてもらえた」と感じてくださるでしょうし、周囲の患者さんには「ここは気を遣っている接骨院だな」という印象を与えることができます。実際に飛沫感染の予防にも効果的でしょう。患者さんが気になる点を知り、そしてその対策を行うことがこれからは大切だと思います。

塩中) 患者さんの身体を気遣うこと、そしてそれに気づいてなければ気づかせるというパフォーマンス。これからの接骨院の差別化にも繋がりそうです。
今日は貴重なお話をありがとうございました。


◇川村 和美
名城大学薬学部薬学科卒業。
名城大学大学院薬学研究科修士課程及び薬学専攻科修了。
日本経営倫理士協会主任フェロートラクショナル・デザイナー。
(医)敬仁会 桔梗ヶ原病院、(医)駿豊会朝岡病院薬局長、(株)スギ薬局勤務等を経て、現在はシップヘルスケアファーマシー東日本(株)の教育研修部部長として、内外で薬剤師の教育指導にあたっている。
日本緩和医療薬学会理事、日本医療薬学会代議員、日本薬剤師会国際委員等、各種医療系学会・研究会における要職を多様兼任している。
感染対策分野においても病院及び大学等で様々な講演活動を実施。

◇塩中 一成
関西医療大学(旧:関西鍼灸短期大学)卒業。関西鍼灸大学卒業。
接骨院院長を経て(株)トライニン取締役、代表取締役を経て現在はアトラ(株)にて取締役就任、および全国90院以上の鍼灸院・接骨院ほねつぎグループの開業研修、関連接骨院・鍼灸院の先生方を対象とした12か月間のリーダーシップセミナーも実施。

沖本浩一 取締役副社長 インタビュー

シップヘルスケアホールディングス(シップヘルスケアHD)では介護事業も手がけておりますが、流行感染には特に注意しています。介護施設ではインフルエンザなどのウイルス感染が流行しやすいのです。感染が拡大したら施設としてもイメージダウンにつながり、感染された方にも申し訳ないですし、結果として施設運営にも影響があるので大きな問題として認識しております。私も脱臼や腰痛で接骨院に何度か行ったことがありますが、そうした際、不衛生であったらどうしても足が遠のいてしまいます。施術内容はもちろんですが、清潔感のあるところへ行ってしまうのが人間の正直な心理かと思います。特に接骨院では先生方が直接患者さまの体を触りますし、水虫などの真菌なら繊維の中にまで入り込みます。対策がないままですと、接骨院に行ったら足がかゆくなったという悪い噂に繋がるかもしれません。

当グループ介護施設には「低濃度オゾン発生装置エアネス」を常設しています。オゾン(O3)は酸素分子3つから成る非常に酸化力の強い分子で、水や空気などの汚れやニオイに抗するため浄水場をはじめ多くの場面で活用されています。例えばこうした設備を導入し、「衛生設備のある環境で施術をしています」とアピールしていただくと、患者さんも安心して施術を受けていただけますね。日本全国の接骨院で、良い環境で施術していただけるような形になれば、社会的にも意義のあることだと思います。

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