情報紙HONETSUGI ACADEMY

武田正骨
2016.09.09

武田正骨

患者さまから見て、接骨院・整骨院とはどういう施設なのか。 これは業界全体のテーマではないでしょうか。 厚生労働大臣認可免許のもと、「骨折、脱臼、捻挫、打撲、挫傷(筋・腱の損傷)の施術をする職種」と行政の見解が示されてい・・・

接骨院・整骨院の業の在り方を問う

患者さまから見て、接骨院・整骨院とはどういう施設なのか。

これは業界全体のテーマではないでしょうか。
厚生労働大臣認可免許のもと、「骨折、脱臼、捻挫、打撲、挫傷(筋・腱の損傷)の施術をする職種」と行政の見解が示されているにも関わらず、対応可能な接骨院はほんの少数です。

西洋医学が日本で浸透し、病院・整形外科が広まったから、接骨院・整骨院では対応することがなくなった。

そのようなお考えをお持ちの方も多くおられると思います。しかし、今回ご紹介する(株)TAKEDA GROUP武田哲也先生はそうではない、とはっきりとおっしゃいます。
骨折や脱臼の整復・固定ができる施術者。それは、柔道整復師にとってロマンでもあります。

しかしながら、正直なところ「外傷患者に来られたら困る」と思っている先生が多いのが実情だと思います。

急性外傷の臨床経験も積めないし、経験もないまま患者さまで試すわけにもいかない。

だからこそ姿勢へのアプローチやトレーニングやリラクゼーションなどが主流となっているのではないでしょうか。
今、この時、全ての接骨院・整骨院の業に携わる者が、その業の在り方を考えるべき時に差し掛かっています。

そのためには出し惜しみせず、互いに協力し、働きかけ、接骨院・整骨院というもののイメージを固定化し、患者さまから接骨院・整骨院だからこそ頼りたいと、自然と思ってもらえるようにならねばなりません。
本記事は、業界人としてどうあるべきか、どうなりたいかを考えながらお読みいただきたい内容です。

2016年8月某日。本州の立ち昇るような暑さと違い、日陰の涼しさにほっとする北海道札幌市にて、(株)TAKEDA GROUP総院長である武田先生にお話をお伺いすることがようやく叶いました。

取材時間まで院内を見学させていただけましたので、ここぞとばかりにじっくりと観察です。
スタッフの方も患者さまもとても明るく、途切れなく予約の方が入って来られます。

院内を見渡すと患者さまからの喜びの声が所狭しと貼られており、

「ケガが治ってまた走れるようになりました!」「コンディションが良くなりました!」

といった声が担当施術者であろう方との2ショット写真と共に掲載されています。

そうして患者さまの声をひとつずつ見ていると、気になるワードがスタッフの方から飛び交います。
施術を終えた先生から「じゃぁ、○○さん、次は来週の○曜日ね。」と声がかかると、受付では「○○さん、次は来週の○曜日ですね、何時頃来れますか?」

患者さまではなく先生が日付を決めています。次はいつ来ることができますか?ではないのです。

患者さまもそれを違和感なく受け入れているようです。

今回は、整復・固定法をテーマにどうしてもお話を伺いたく依頼いたしましたが、ここにきて新たな発見を得ました。この発見を読者の方へお伝えするべく、早速お部屋をお借りして、武田総院長にお話を伺うことにしました。


外傷の応急施術こそが柔道整復術の根幹をなす

◆(株)TAKEDA GROUPの応急施術とは
私は、柔道整復術とは“医療”であり、“治療”するものと考えています。だからこそ院の理念も“治療理念”としています。
そして、外傷の応急施術こそが柔道整復術の根幹をなすものです。

例えば骨折であれば、患者が施術を希望して来院した以上、損傷の評価ができて、折れていたら整復・固定といった応急施術をしなければならない。折れているからできません、とは絶対に言いません。骨折だと分かった以上は、接骨院で何らかの手当てをしなければなりません。

①損傷の状態を正確に評価する。
②整復・固定の意義・必要性を説明し、応急施術の同意を得る。
③骨のズレを早期に正しい位置に整復する。
④再転位を防ぐためにギプスなどで固定する。
⑤適切な指導管理を行う。
⑥医療機関へ「施術情報提供書」と共に医療機関へ紹介する。
ここまでが“応急施術の範囲”です。


◆何故外傷を中心に据えたのか
開業当初は20代半ばでしたから熱意だけは誰にも負けないと思っていましたし、自分の技術にも自信を持っていました。
しかしあるとき、7歳の男の子が足首を捻挫して、はじめてうちに来院してきた際に、私はその自信を失うことになります。

足首を見てみると外果が結構腫れている状態でしたから、連れ添って来たお母さんから「どうですか?」と聞かれたとき、「捻挫だと思います」と答えました。

そうすると、お母さんもお子さんのことが心配ですから、「本当に捻挫ですよね?だいじょうぶですよね?」と聞いてきます。しかし私は、“たぶん”としか答えることができなかった。後療法もできるし、電気やマッサージ、運動療法も得意でした。でもその問いかけを受けるまで、外傷を診断するという概念がなかった。自信をもって捻挫だと答えることができなかった。

今でもそのときのことは鮮明に覚えています。柔道整復師という職業に対して、自らの技術に対しての自信が一気に崩れた瞬間でした。自分は、実は初期の新鮮外傷を診る力がなかったのだと痛感したのです。
そうした折、当時継続して読んでいた「綜合整骨」という専門誌があったのですが、求人広告欄に骨折の保存療法で有名な東京の整形外科が載っていまして、「将来を背負う自覚を持ち、向上心旺盛な柔整師募集」というものでした。このキャッチがそのときの心にぐっと刺さったんですね。

その整形外科ではリハビリテーションで世界的に有名な方が当時院長をされており、副院長は柔道整復師という当時でも珍しいタイプの整形外科だったと思います。すぐさま電話をして、自身の技術力不足を説明し、先生のもとで研修をさせてもらえないかとお願いしました。

とても理解のある先生で、心よく引き受けていただくことができた。今はもう院長は他界されて、当時の院は無くなっているのですが、副院長だった方が想いを継いでおり、今でもおつきあいをさせていただいています。

(株)TAKEDA GROUPのスタッフの研修受け入れを定期的にしてくれていて、骨折や脱臼を中心とした外傷の診断・初期治療などを学び、グループの技術力向上に繋がっています。


◆患者を「みる」ということ

創業時から考えていたことは、ちょっとしたケガやからだのことを気軽に相談できる場所として、もっともっと接骨院は身近にあるべきだということです。

理想は学校の保健室のような場所ですね。例えば学生が捻挫して保健室に行くと、そこには保健室の先生がいてくれる。応急手当をしてもらって、「様子を見てみようか」とか、「これは病院に行っておいで」とアドバイスを受ける。そういう地域の保健室のような接骨院でありたいと思っています。
そのためには、外傷の鑑別ができ、外傷の応急施術ができることが前提で、かつ、身近で温もりがなければいけない。患者を見ず、モニターだけを見て話をしたり、「骨折何本やった」と施術部位や傷病名で話すようなことはしたくありません。スタッフにも「今日は腰と膝の新患さんが来た」というような言い方をしたら、患者のバックボーンと損傷形態をきちんと告げなさいと厳しく言っています。
もっともっと地域から、患者さんから求められる場所でありたい。怪我をしたらここ以外は有りえないと言ってもらえるようになりたい。

そうあるためには「ミスをしない」ということが重要です。

外傷は治して当たり前、ミスをするとすべてを失います。捻挫ですと伝えた結果、病院で診てもらったら実は折れてました、では話になりません。30年間、自分が命を燃やしてやってきたことですから、スタッフにも想いを継いでほしいと思っています。


◆技術者から経営者へ
20代のときは、とにかくお金の全てを自分の技術のために使いました。整形外科学や機能解剖学などの文献を買い求め、様々な技術セミナーを受講し、学会や研究会では他の先生の研究を学んだり、自分の症例や施術法を発表したり。
そんな中のひとつで、あるテープ療法の技術を学んだ際に、当時ブームになる直前でしたが、痛みがすぐ取れる!と感動して早速院に取り入れました。

色々と検証しながら続けていると、ある日、TV局から取材依頼の電話がかかりました。

札幌近郊で、そのテープ療法を実践しているのがうちだけだからということでした。そんなチャンスはそうそうありませんので、せっかくだからと出演したところ、それが何回も再放送されて。放映後に患者さんから次々に電話がかかってくる、東京で同じ研修先の後輩からは研修先として受け入れをしてほしいという電話もかかってくる、ということが起こりました。
実は、そもそも私はグループ展開を視野に入れていませんでした。一接骨院で一施術者として、20~30人/日の患者さんに集中していられれば良かった。しかし、そういった状況になって研修受け入れを始めると、1院ではスタッフが多くなり過ぎてしまったんです。

そのタイミングで閉院する院があるから買わないかというお話をいただき、2院目である札大前院を2013年にオープンしたんです。

新しい院を地域に知ってもらおうとプレオープンで無料体験を試みたところ、5~60人もの方に集まっていただき、半数以上が再来院してくれるようになりました。
それから今年2016年8月2日に琴似院をオープンして8院。

こちらの院ではお子さんのいる女性が通いやすい環境を作りオープンしています。


◆患者さまの健康に対する欲求とスタッフのやりがいを満たす
入社したらまず、4泊5日の新人研修を行います。理念研修や事務処理、基本の技術に加え、外部の研修会社にも依頼してビジネスマナー研修も加えています。またその後、半年間のトライアル期間で新人にはそういった基本的な手技・理念などを覚えてもらいます。学生から社会人にチェンジさせる期間です。
また企業見学に来た学生には必ず、何故、当グループが存在していているのかということを話します。

健康になりたい、健やかな生活を送りたいという患者さんの欲求充足のお手伝いをし、幸せに過ごしていただくこと、これは理念のひとつです。人間の寿命自体は長くなっていますが、健康寿命はそう長くはありません。

しかし、できるだけその健康な状態を維持したいと思うのが人の心でしょう。幸福の追求と社会貢献。患者さんは幸せを得て、スタッフはそこにやりがいや生きがいを得て適性な報酬を得る。それをもって社会に貢献する、これが(株)TAKEDA GROUPの理念です。

正しい接骨院の在り方・これから育つ柔道整復師

◆学校教育について
柔道整復学を札幌の青葉鍼灸柔整専門学校で教えています。13年前、新設校ブームの頃に依頼をいただき、教員資格を取得して教壇に立ったのが最初です。
最近は外傷に興味を持つ学生が減っていて、自分たちが学んでいた頃のように、こう、食い入るように見るような子が少ないです。

というのも彼らはそもそも柔道整復師になる、外傷の処置をしたいと決めて入ってきてはいないんです。整体やスポーツトレーナーを目指しているか、手に職を、ということで資格取得自体が目的になってしまってるんですね。

彼らには、外傷の初期対応・施術をするのが柔道整復師なんだよ、と伝えています。
今の学生たちは、その資格で、接骨院で勝負していくときに十分な臨床研修をしていない状態にあります。

教科書の中だけの知識になっているんです。教える教員も骨を接いだことがない方が多数で、これは言わば宇宙に行ったことのない者に宇宙飛行士の訓練を受けるようなものでしょう。

学生には、本当に骨を接いだことがないって伝わってしまうものなんです。それでも面白いのが興味が無さそうにしてても、実際の現場で起きた外傷対応のビデオの時間になると急にむくっと起きて見たりもするんですよ。そうして教えて興味を持ってくれた子が、そのままスタッフとして応募してきたりすると、やっぱり嬉しいですね。

学校だけではなく、業界全体が柔道整復師として外傷対応ができるようになる環境にないと思います。なぜ外傷の患者が接骨院に来なくなったのか、その本質を今一度考えてみてほしい。

整形外科ができたからではありません。

単純に、接骨院で柔道整復師が外傷を診なくなったからです。
そういったイメージがありますから、うちもオープンしてすぐは外傷患者は多くは来ません。

でも、しっかりと鑑別し、整復や固定を行い、しかるべき医療機関へ紹介する、これを続ければ1, 2年もすれば外傷の患者さんが来るようになりますよ。

患者を抜きにした教育では、医療人は育たないと思います。しかし、現在の学校教育の現状は国家試験に合格するための座学、実技審査を突破するための実技が教育の中心になっているかもしれません。

しかし厚労省も学校も実は、実際にできる人を増やさないといけないということはわかっているんです。さまざまな問題があって難しいですが、学校の付属施設以外での臨床実習を単位として認めたらいいんじゃないかとも思います。


◆正しい接骨院の在り方とは
先般の柔整療養費検討専門委員会でも話題になっていましたが、今後、蓄積性の損傷形態である「亜急性の外傷」が療養費の支給対象から除かれる動きがあります※。

損傷形態が明らかな「急性の外傷」のみが療養費の支給対象となると、保険に異存している多くの接骨院は壊滅的な打撃を受けることが予想されます。

こうした動きも受け、次の目標としては外傷対応ができる接骨院として日本最高峰を目指しています。

そうしてこの会社で働けて良かったというスタッフであふれ、ここの患者で良かったという人であふれているようになりたいですね。そうすればおのずと地域で圧倒的なシェアを取れる。

地域満足度=新患の数です。

整形外科の先生は快く私に教えてくれ、その代わりこう言われました。
「学んだことを地域で広めてくれ。それが君たちのミッションだ。」
(株)TAKEDA GROUPにとっては、私は経営に専念した方が良いでしょう。それでも教壇に立ち続けているのは、この言葉があるからです。
◆読者の先生方に伝えたいこと
柔道整復師のみなさんは、ご自分の大切なご家族が骨折したときに自信をもってご自身で対応できるでしょうか。あるいは、遠方の知り合いから骨折したけどどうしようと相談されたとき、近所の接骨院への受診を勧めるでしょうか。

これにYESと自信を持って答えられない、それが今の接骨院の現状なんです。
みなさんには、外傷の初期施術を芯に置いて、接骨院というものの価値を広めていってほしいです。

最初にもお伝えしましたが、私は柔道整復術とは医療だと考えています。

医師がすることの一部を実践して良いと法律でなっています。こここそが私たちの本来の業務であり、ここを芯に置いたうえで、姿勢アプローチやトレーニングを行えば良いと思います。接骨院・整骨院と看板を掲げているからには、外傷に対する初期施術ができるようになっていただきたいです。
※厚生労働省 柔道整復師療養費検討専門委員会 配布資料

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