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接骨院勤務日報【#54~#57】

【前回のあらすじ】先輩である西山さんと食事に行った。その時に、西山さんを含めた数人のスタッフは岩田さんをよく思っていない、ということを告げられる。そして、<僕>はどう思っているのかと聞かれ…。

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【54】西山さんの不満

実は、西山さんとランチに行くのは初めてではない。


いつもは向こうから気さくに話しかけてきて楽しいランチタイムになるのだが、今日はあまり話しかけられない。なんだか様子がおかしい。

院からは少し離れたお店でランチをすることになった。西山さんは、お店に入るなり「日替わり二つ」と注文をして、空いている席に座った。僕も続いて席に着くと、すぐに西山さんから一言





「岩田さんのことどう思う?」





予測していた展開に少し笑ってしまった。
僕は生意気にも「西山さん達はどう思っているんですか?」と質問を返した。

西山さんが少し笑いながら「やっぱりそっち側か…」とつぶやいたのが聞こえた。



見えない境界線を勝手に作って相手がどちら側にいるのか、敵か味方かをはっきりさせたい気持ちは分かる。でも、それで誰にメリットがあるのだろう。

案の定、気まずい雰囲気になりかけたところで、ちょうど食事が運ばれてきたので「先に食べましょう」と提案した。




食後のコーヒーを注文し、まず西山さんが思っていることを聞いた。


西山さんと数人のスタッフは、岩田さんのことをよく思っていない。

その理由は、お金の話ばかりをする、しんどい仕事はしない、僕以外のスタッフに相談がないからだという。


それは、僕も同感だった。確かに、お金の話ばかりされるのは気持ち良くはない。でも、岩田さんには家庭がある。同じ境遇の人は、西山さんを含めスタッフにはいない。ということは、同じ思考になれるはずもなく、なる必要もない。

しんどい仕事をしないということも、岩田さんの仕事と他のスタッフの仕事が同じ内容であるはずなら不満が出てもおかしくない。でも、西山さんと岩田さんは仕事の内容が違う。

何がしんどくて何が楽なのかは、比較できないし正しい判断もできないものだ。



僕は、田島さんからそう教わった。



西山さんも、納得できる部分もあるけど何かしっくりきていない、というような感じらしい。僕も疑問に思うことを聞いてみた。

【55】妬みから生まれるもの

「西山さんは、岩田さんの何が一番気にいらないんですか?そこを教えてもらえたら、解決できる気がするんです。今の状態をどうにかしたいと思っているから話をしてくれたんですよね?今のままじゃ、僕にはどうすることもできません。」

「気に入らないところはさっき言ったところだけど、一番と言われたら分からない気がする。でも、俺の周りのメンバーも岩田さんと合わない、このままだったら辞めそうだって言ってる。」



そして、西山さんは僕にもう一度「岩田さんのことはどう思っているの?」と聞いてきた。

この時点で僕は、施術者としては西山さんに負けているだろうが、経営の勉強や情報処理については僕も負けてはいないと感じた。

なぜなら僕は個人的な感情ではなく、仕事として割り切って岩田さんと付き合っているからだ。

なので、岩田さんのことが個人的に好きかと言われるとすごく難しい…!


「特に嫌いではないですね。でも、正直苦手なところは多いです。

…田島さんは、先輩としてすごく好きだったって言えるんですけどね。岩田さんは、本当にただパートナーって感じです。 尊敬できるところは、もちろんあります。それが無かったら多分嫌いになっていると思いますし、そもそも院長に抜擢されなかったと思います。」

「岩田さんが院長になるって聞いたとき、正直俺は理由が分からなかったよ。前の院長とは実力も全く違うし。まあ、あの院長の代わりになれる人って、うちのスタッフの中にいないだろうとは思っていたけど。それでも、よりによって岩田さんが?って感じだったんだよね。君はそうは思わなかった?」

正直めっちゃ思いました(笑)。でも、岩田さんはずっと社長や役員の方に「院長をやりたい」ってアピールしていたそうですよ。自分が院長になったらこういう戦略でやっていく、って資料も作ってプレゼンしたり。どうしてもなりたかったみたいです。

確かに前の院長とは実力は違うけど、そう考えると、会社は急に岩田さんを院長に抜擢したわけじゃないんだろうなと思います。」

「…岩田さん、そこまで行動していたんだな。」



少しは納得してもらえたのか、今日話したことは西山さんから他のメンバーに伝えてくれるそうだ。

今なら、なぜ西山さん達が岩田さんを良く思えなかったのか分かる気がする。

西山さんの周りにいるメンバーは、副院長になってもおかしくないメンバーだった。岩田さんも横並びの存在だったのに、副院長を飛び越えていきなりの院長昇進になり、少し妬みもあったのかもしれない。


でも、妬みからは何も生まれることはない。


妬みを愚痴として誰かにこぼすぐらいであれば、特に問題にはならない。しかし、妬みが他人を巻き込み、組織を崩壊させ、結果として患者さまに迷惑をかける例を、今まで嫌というほど見てきた。

そういうトラブルを起こす人に共通しているのは、自分が満足する人生を歩んでいないということだ。妬むことをやめるように指導すればするほど、妬みが酷くなる場合がある。

自分が満たされている人は、妬むことはあっても「自分は自分」だと、他人を巻き込んだり害したりはしない。一番の解決策は、その人の人生を豊かにできるように一緒に考えてあげることである。




当時の僕は、それが分かっていなかった。

僕は西山さんの人生を豊かにすることができていなかったんだ。

【56】上辺の平穏

西山さんと話をして、ちょっとは納得してもらって良い感じになったのでは?と思っていた。
 
しかし、西山さんは僕の話をこう受け取ったみたいだ(後から本人に聞いた)。
 


「なんでお前にアドバイスをされないといけないのか。」
 


決して僕はアドバイスしたつもりはなかったが、結果的にそういう風に捉えられたみたいだった。
 
今振り返ってみても、これは自分のミスだ。勉強会を主催したり、岩田さんの相談相手になったり、周囲に一目置かれているような自覚はあったが、あくまでも新人上がりであることに変わりはない。

二年目の自分が先輩に意見をするときは、慎重にならねばならないことは分かっていたはずなのに。 



結局、西山さんやその周りのスタッフが、現場で自分たちの理想の形を勝手に作り始めるようになった。
 
岩田さんとは、何とか合わせながら上手くやってくれているし、僕が業務の指示を出さないといけないときも、嫌な顔をせずにすんなり聞いてくれる。
 
しかし、その時の会話は上辺だけのような機械的なやり取りが続いた。
  
これには危機感を感じて、岩田さんとの打ち合わせの時に何度も訴えた。でも、どれだけ言っても岩田さんは興味を持ってくれない。
 


「そんなのなるようになるよ。それよりも来月の給与は〇〇ぐらい歩合がつくんだ」
 
と幸せな会話ばかりする。
 


そのうち、僕もなるようになるのかもしれない、という甘い考えが思考を占め始め、しばらくこの様子を見ることにした。
 
当時の詳しい記憶はほとんどない。きっと、この期間の僕は成長が止まっていたんだと思う。
 
数ヶ月もの間、何も動かず、単に現場での業務をこなし、岩田さんと打ち合わせをして、勉強会もこなした。
 
田島さんがいなくなってから、勉強会には院長が協力してくれていて、かなり充実した勉強会をすることができていた。しかし、院長に勉強会のことで質問はできても、今の院の現状はなかなか相談できなかった。



  
ほったらかしの状態が続き、ついに院の売上が止まった。

【57】チームの崩壊

売上の成長が止まった


というよりも下がり始めた。



無責任な話ではあるが、これだけ予測しやすかった成績降下はなかった。そこに気づいていながら、僕は何もしなかったし、できなかった。

何もできない自分にふがいなさも感じたが、それ以上に、どうすれば良いのか分からなかった。

岩田さんは冷静に分析をしながら原因の追究をしていたが、僕からすれば的外れな気もしていた。
 


岩田さんの分析では、患者さまへの来院指導の際に、いつも全員が同じ内容を話すためマンネリ化している、ということだった。
 
確かにそれは事実であったし、改善すれば患者さまの反応は少し変わる。
 


そう、少しだけ。数字は伸びずに低迷したままだ。
 


根本的な原因はオペレーションではない。チームとしてのまとまりが欠如しているからだ。チームとして患者さまをどうしてあげたいのか、何をすべきかを全くミッション化できていない。
 
スタッフは言われたことをやるだけで、魂の抜けたような行動しかできなくなっているのだ。
 
できていないことばかりに目が行ってしまうことは仕方がない。しかし、目を向けないといけないところを無視してはいけない。
 
今回の場合、チームとしての理念が浸透しているのか、目標・目的・手段がずれてはいないいか、などの精神的な部分ある。
 
チーム一丸にならないと、この問題を超えることはできないのに、何ひとつ取り組むことはなかった。

 
結局、西山さん含む4人が続けて異動希望や自主退職を申し出た。スタッフ数が大きく変化したことで、必然的に売上が下がった。さすが岩田さんも焦り出したが、今さらこの波を止めることはできない。
  
もがけばもがくほど深みにはまる。


何とかしようと色々な施策にチャレンジをしたが、見事にすべて失敗に終わり、会社の改善会議にあげられてしまうほどの問題の院になった。岩田さんも、日に日に覇気が無くなっていった。
 


そんなある日、岩田さんとは変わらず打ち合わせをしていて、そのまま飲みに行くことになった。お店について一息ついていると、誰かが僕たちの席にまっすぐ近づいてきた。
 
一瞬、本当に誰かと思った。 




 
院長が来たのだった。

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